2023.06.03
親知らず

親知らず抜歯後のしびれ(下歯槽神経麻痺・オトガイ神経麻痺)の原因と対策

抜歯後に痛みやしびれといった症状が現れる人は少なくありません。痛みやしびれが麻酔によるものであれば、長くても数週間ほどで改善されるでしょう。しかし、下歯槽神経麻痺(かしそうしんけいまひ)・オトガイ神経麻痺によるしびれの場合、完治するまでにかなりの時間がかかってしまうことがあります。

本記事では、下歯槽神経麻痺・オトガイ神経麻痺の原因と対策について詳しく解説します。

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)とは?

下歯槽神経麻痺(かしそうしんけいまひ)とは、歯科治療や下顎の外科手術を行った際、下顎の骨の中を通る下歯槽神経が損傷したり、圧迫されることにより起こる神経麻痺です。

下歯槽神経は三叉神経(さんさしんけい)の第三枝のことで、顎の中を通る感覚神経として、下顎の歯、下唇、顎の皮膚など下顎周囲と舌の一部の感覚をつかさどっています。そのため、下歯槽神経が損傷すると、下唇や口角部、歯茎にまでしびれや麻痺の症状が現れます。

また、下歯槽神経の末梢部にある神経をオトガイ神経といい、同じような症状であっても、オトガイ神経麻痺と診断されるケースもあります。下歯槽神経麻痺やオトガイ神経麻痺は歯科医療にともなって偶然発症してしまうものです。そのため、予想外に発症してしまう場合もあります。

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)の症状

親知らず抜歯後にでる麻痺やしびれにはいくつか種類があり、その一つに下歯槽神経麻痺があります。

下歯槽神経麻痺の症状は、知覚の低下です。触れた感覚が曖昧で、髭を剃る際、ご飯粒が付いているときなどの感触を感じづらくなります。また、過敏や痛み、舌の痺れ、会話のしづらさなどが現れることもあるようです。

なお、下歯槽神経の損傷具合によって症状の度合いは異なりますが、下歯槽神経麻痺が左右どちらも起こることはなく、麻痺が現れるのは片側だけとされています。

症状が現れると口周辺の動作がぎこちなくなり、水を飲む、話すといった日常動作がしづらくなる場合もあります。また、動作ができないことで筋肉も通常通り使われなくなるため、麻痺が長引くと、表情筋が短縮を起こしてしまい、表情が歪んだり、浮腫んでしまうといった二次的な症状が出ることもあります。

自覚症状はほぼすべて、違和感として感じられるでしょう。症状が進行してから治療を開始すると完治まで長引く可能性があるため、抜歯後に違和感があれば、なるべく早めに申告することが大切です。

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)の原因

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)とは

下歯槽神経麻痺の原因の多くは、親知らずの抜歯後とされており、抜歯によって下歯槽神経、オトガイ神経が損傷、圧迫することで起こります。また、抜歯する歯が2本以上の場合、レントゲンで見たとき神経の幅の半分以上が親知らずの根になっている場合、親知らずの頭の位置が神経に近く抜く際に親知らずの頭を削る必要がある場合などは、簡単に抜けなかったり、神経を傷つけやすくなるため、下歯槽神経麻痺になる確率が高くなるとされています。

さらに近年では、インプラント治療が広く普及しているため、親知らずの抜歯に関わらず、歯科医療に起因する下歯槽神経麻痺のトラブルが多くなっています。そのため抜歯やインプラント治療以外でも、下顎の外科手術後や下歯神経の手術の後に良性腫瘍摘出などをした場合、歯周病の治療後なども下歯槽神経麻痺が起こる可能性があります。

なお、下歯槽神経麻痺は、歯科治療後だけに起こるわけではありません。たとえば、美容外科手術や交通事故などによる下顎骨骨折の整復手術などの後にも起こることがあります。

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)の治療方法

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)の治療方法

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)にはいくつかの治療方法があります。また、下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)の治療については、発症後、早期の治療が必要となるため、症状を感じた場合にはどの治療方法でも早急に対応することが望ましいとされています。

星状神経筋ブロック療法

星状神経筋(せいじょうしんけいせつ)ブロック療法とは、頭部や頚部、顔面、上肢の痛みなどを緩和するための治療です。頚部の星状神経筋に局所麻酔をすることで、交感神経が一時的に緩み、副交感神経を優位にさせます。これにより、頭、首、肩、上肢の一部の緊張が取れ、血流を良くし、自然治癒力を高めることができます。血流を改善し、痛みや痺れを和らげ、炎症部分を回復させることを目的として行い、治療には保険が適応されます。

星状神経筋ブロックの注射の痛みに関しては、針を刺す痛みがありますが、比較的細い針で行うため、強い痛みをともなう治療方法ではありません。また、治療効果は個人差、疾患の差があるため、効果が出るのに数回目の場合もあれば数十回目の場合もあり、継続して行う治療方法になります。

レーザー治療

レーザー治療とは、低出力レーザーを主に症状の出ている部分に照射し、交感神経を抑制、血行を良くするという比較的行いやすい治療法です。レーザー治療を行った場合、治療効果としては、局所の血流障害の改善、筋の緊張緩和など、星状神経筋ブロックと同じような効果が得られます。

近赤外線治療に関しても、交感神経の緊張を緩める効果があり、治療の際には、頭頚部のみが対象となる為、腰をかけた状態での治療が可能な場合もあります。また、鍼灸治療と併用し行う場合もありますが、星状神経筋ブロック同様、効果に関しては個人差や症状の差があるため、一度の治療で完治するわけではありません。

薬物療法

薬物療法とは、神経の賦活を目的として薬を使用する療法となります。下歯槽神経麻痺において使用される薬物は、ビタミンB12やATPといった薬が使用されます。また、知覚異常には、局部麻酔薬、ステロイド剤、非ステロイド剤、抗うつ剤、抗痙攣剤を使用し経過を観察していきます。状況により、他の治療法と併用して使用する場合が多い治療方法です。

鍼灸治療

鍼灸治療とは、疾患や症状に適したツボに金属の細い針を刺し、体に刺激を与えることで、元々身体に備わっている自然治癒力を高めて正常な状態にする治療方法です。鍼灸治療を行うと、血流が良くなり、凝り固まっている筋肉を柔らかくし、神経修復を促すことができます。他の治療法同様に、一度で効果を発揮するのではなく、複数回に分け行う必要があります。

他の治療と併用して行うこともあり、細い針で行うため強い痛みはありません。また、他の治療で違和感がある場合にも鍼灸治療を行うことがあります。長期の治療法となるため、通院必須の治療法です。

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)の対策・予防方法

下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)の対策や予防方法についてですが、下歯槽神経麻痺については患者側の対策ではなく、治療する側の対策や予防が必要となります。下歯槽神経自体は、レントゲンで確認することはできませんが、骨の中の管をレントゲンで見ることができ、最近ではデジタルCTという立体で見えるレントゲンも存在しています。それらの技術を使い、インプラントや抜歯はCT撮影をしておくことが望ましいです。

また、抜歯後に神経を損傷、圧迫しないように豊富な知識と技術を習得した担当医に処置してもらうことが最も有効な対策と言えます。麻痺が起きないようにするため、抜歯の場合は、舌側歯肉にも注意を払い、大きく傷つけてしまいそうな場合は舌側骨膜まで剥離をする対策もあり、下歯槽神経麻痺を起こさないようにするためには手術前の段階で起こり得る可能性を把握できる技術を必要とされます。下歯槽神経麻痺の原因となる手術において、その治療法は様々ですが、きちんとした知識をもって行わないと完治することのない後遺症として残る可能性があるため、お任せする病院選びがいかに重要かが分かります。

また、抜歯の後には他にも様々な感染症の恐れがあるため、指や舌でいじらないことや、抗生物質の飲み方などは決まりを守るようにしましょう。抜歯後は、抜いたところが傷口になっているため、指や舌で触ることにより菌が入り炎症を起こす原因となってしまいます。これにより治りが悪くなったり、痛みが出たりすることもあるため注意しなければなりません。

血が出る場合には清潔なガーゼなどを噛み、むやみに触れないようにしましょう。特に抜歯後3、4日は感染を起こしやすいとされているため注意しなければなりません。食べ物が詰まった場合も同様に傷口に触れないよう、うがい薬でうがいをして流すように心がけます。

抗生物質の飲み方に関しては、指定された期間、適量を守り服用します。抜歯が終わったからと独断で服薬を止めたり、中途半端な飲み方をしたりすると逆効果です。抗生物質は抜歯後に限らず、継続して服用することで効果を得られます。下歯槽神経麻痺・オトガイ神経麻痺により薬物療法を行う場合にも同様に飲み切るようにすることが大切です。

下歯槽神経麻痺を防ぐには適切な処置をしてくれる病院選びが重要

親知らず抜歯後に起こるしびれの多くは麻酔由来で、自然に治まります。しかし、なかには下歯槽神経麻痺・オトガイ神経麻痺によってしびれを感じる場合があります。

下歯槽神経麻痺・オトガイ神経麻痺の原因は、神経の損傷や圧迫によるものです。予想外に起こる症状のため、違和感がある場合は速やかに歯科医へ相談し、なるべく早めに治療を始めましょう。

また、親知らずを抜歯する際は、施術前に神経の位置などを詳しく見てもらうことも大切です。そのため実績豊富な歯科医院を選ぶことをおすすめします。万が一、治療後にしびれなどの違和感が残る場合は、我慢せずに申し出て、しっかりケアを受けてください。

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